伝えると言うこと

 Kというラーメン屋がある。日本の方が開かれたもので、僕なんぞ香港でこういうラーメン屋さんがあるんなら満足という感じだ。単身者を中心に日本人のお客さんは多い。

 もちろん居酒屋や割烹にいくのと違って安価なラーメン屋さんは地元の人にも人気だ。

 このKが1年ほど前に支店を出した。ぼくのオフィスからはこの支店のほうが近く、これは夕食の選択肢が広がったなと喜んで早速食べに行った。

 メニューは本店と同じ。いつも頼むCセットをオーダーした。餃子(小=4個入りでちゃんとクリスピー)とミニチャーハン(本店ではちゃんと一粒一粒に熱が通った優れもの)そしてミニラーメン(塩・醤油・味噌の中から選べます。きちっとだしを取っていると思う。)

 まず、がっくり来たのはラーメンが先に出てきてしまったこと。本店ではこれはない=つまりマニュアルを守っているのだと思うが餃子、チャーハン、麺の順で出てくる。

 このラーメン。問題は味が2つも3つも足りない。コクもない。仕込みをさぼったのかもしれない。次に来たのがチャーハン。これはきちんと火が通っていない代物だった。最後に忘れた頃に餃子が来る。皮がずたずたにやぶれていたし、具の味付けがおかしい。(言っておくが味が足りないではなくおかしいのである)

 なんというか。僕は別にグルメじゃない。ただ本店と同じメニューで同じ値段ならそれなりの期待値は捨てられない。日本人経営の店であるから、勝手に本当に勝手に推測すればきちんとレシピも渡し、テストもしてよし、こいつならと思って支店をまかせたのだと思う。

 僕に邪推できることはまかされた調理責任者はレシピ、分量、調理時間などなどすてを伝授されて経営者もそれを見届けた。しかし、一定の儀式を終えてまかされてしまえば彼にとってはマニュアルは面倒に思えるのだと思う。こんなものでいいじゃない。そんなに厳格にやらなくても別にそんなに変らないでしょ。ということをやっているのだと思う。つまりなぜそうせねばならないのかについては彼はわかっていないのだ。

 僕はこのラーメン屋は好きで支店のほうもがんばって欲しいと思っている。その後、どうかな?と思いつつ2,3回通った限りでは改善されてない。何より本店では地元の人からおたくの支店ちょっと??ですねと言われてきているらしい。

 わざを伝えたとしても心をわかってくれないと意味が無い。香港の有名中華レストランは支店は本当にまずいところが多いと思う。まずいんだから仕方が無い。業の受け渡しが機能しない。日本文化と中華文化の相反するところだと思う。

*そういうことを一つの事例を持って決め付けるなとおっしゃる方もいましょう。僕には上海にいた頃のイタリア料理屋、香港のカウンターバーのバーテンダーなど似たような例はたくさんあるのだけれど、この一つだけあげさせてもらいます。僕を信じてください。今後も類似話は飲食業に限らず出てきます(笑)。

 でもこのラーメン屋の本店は通うからね。

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 13日のMYヒットはパテックス10枚貼り。とほほ。